EU指令では電気自動車用のリチウムイオン電池のバッテリーセル(電極材料)をリサイクルする場合、最低でも50%のリサイクル効率(重量比)が求められています。現在は溶剤を用いたリサイクルが主流ですが、本稿の装置は溶剤を一切使わず、物理的な手法でバッテリーセルを原材料へと剥離分解します。
【概要】Libの電極材料を物理的に剥離分解する装置
- 本装置は、リサイクルが極めて困難であるリチウムイオン電池の「多層電極材料」を、単一の原材料へと剥離分解します。
- 同時に、電池の電極材料の製造工程で発生するロス材をリサイクルします。
- 更に、ロス材の無価値部分(複合材料)を剥離して、単一の原材料へと戻して価値を復元します。
概要は以上のとおりです。
正極:アルミ薄膜のコバルト酸化物を剥離分解する
正極材にはコバルト酸化物が貼り付けられているので、それを剥離分解します。
負極:銅薄膜のカーボンを剥離分解する
負極材には、銅箔にカーボンが塗られています。銅箔とカーボンはPVDFと呼ばれる接着剤が使用されていることが一般的です。そのため、リチウムイオン二次電池の製造工場では、常にロス材が発生しています。おおむね、製造料の20%がロスとして処理されます。
加えて、材料をそのまま銅炉に入れて処理してしまうと、接着剤のPVDFが分解してフッ素ガスが発生する。極めて有害なガスであるため、環境問題を軽視している地域において行われる処理方法です。
巻物の場合は「Type-1」型を使って剥離分解
巻物タイプの場合は「Type-1」型の装置を使って剥離します。本装置は電源のみで動作して、取り込まれたバッテリーの電極材料を剥離分解する。電源以外の水や薬品といったリソースは一切使わない。
下段軸はカーボンが付着した銅箔をセットして、銅箔に接着されているカーボンを剥離する。そして、回収した銅箔を上段軸で巻取って完了です。写真を見ての通り、上段軸には純度ほぼ100%の銅箔だけが巻き取られています。
剥離したカーボン材はこの通り、ラーメン状に細かく寸断された状態になります。回収した銅箔はこの通り、ほぼ完璧に単体化されています。溶剤や化学反応を使った複雑な手法では、決して実現し得ない効率です。
ハギレの場合は「Type-2」型を使って剥離分解
巻物ではなく、このようなハギレ状態の電極材料に対しては「Type-2」型を使って剥離分解します。
ハギレをこの装置に放り込むことで、カーボンと銅箔が細かいチップ状になって剥離されて出てきます。
左側が回収された銅で、右側が回収されたカーボン材です。ハギレの場合でも、純度はほぼ100%に近い状態で、電極材料を剥離分解する。
動作時の動画
本装置の経済効果の概算
正極材の場合は「アルミ / コバルト」に分解します。負極材の場合は「銅 / カーボン」に分解します。
- アルミ:約200円 /kg
- コバルト:約4000円 /kg
- 銅:約600円 /kg
- カーボン:約12円 /kg
負極材(カーボン55% / 銅箔45%)を約1トン、剥離分解でリサイクルした場合、約270000円の銅を回収できる計算です(※相場は日々変動しているので参考程度に)。
詳細な仕様書(パンフレット)について
Lib(リチウムイオンバッテリー)の電極材料を溶剤ゼロでリサイクルする装置は、全部で5種類製作可能です。
リサイクル対象 | 機能 | タイプ | 資料名称 | |
---|---|---|---|---|
負極材 | 銅 / カーボン | 剥離 | 巻物(Type-1) | N-Type1.pdf |
ハギレ(Type-2) | N-Type2.pdf | |||
正極材 | アルミ / コバルト | 巻物(Type-1) | P-Type1.pdf | |
ハギレ(Type-2) | P-Type2.pdf | |||
カーボン / コバルト | 高純度化 | ハギレ(Type-2) | Koujou.pdf |
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